遠くて近い旅にでる Imaginary Cartography
ここのところの感染症のパンデミックで、移動が制限される中、あらためて旅で得たものの大切さや、気ままに移動できることのありがたさを感じています。
旅に出ると、目に見える風景が変わることで、何気ないものにも注意がそそがれ新鮮に感じられます。遠足のお弁当が、家で食べるごはんよりもずっと美味しく感じられることに似ているかもしれません。日常を離れて見知らぬ風景に出合い、光や音、におい、言葉…様々なものが入れ替わると、いきなり感覚のセンサーが活性化し、旅のマジックが始まります。では、自分は移動しないで、まわりの景色が入れ替わったとしたら…いや、風景の見方を変えてみたらどうでしょうか。もう一つの旅が見つかるかもしれません。
楽しいことは他の人とも共有したくなります。たとえば、目の前の風景から想像できる「どこか」を絵葉書にして誰かに送ったり、地図をつくって自分の町を旅してみます。同じ風景でも、それぞれ異なる行き先を思い描くかもしれません。
毎日の暮らしの中で、イマジネーションで地図を作るように、遠くて近い旅へここから出発しましょう。
新井厚子

新井厚子 / Atsuko Arai
美術家。京都府福知山市大江町出身。
90年代にスペインに渡り、バルセロナを拠点に地域の特性や文化習慣から発想をえて、立体、写真映像作品など制作。2015年頃より地元に拠点を移し制作活動を行う。
スペインのタラゴナ近代美術館、バスク写真美術館などで個展、越後妻有大地の芸術祭、国際芸術センター青森、アンガールアートセンターなど各地でアートプロジェクト、展覧会を行う。野村国際文化財団、カタルーニャ文化省、ボティン文化財団などで文化芸術助成を受け、またドイツ、フィンランド、カナダなどでアーティスト・イン・レジデンスに招聘作家として滞在し制作、発表。